England-London-20110821085328

サムライレポート

イギリス大学院にて開発学を専攻し、社会的責任投資(SRI)のプロフェッショナルとして活躍する鈴木 祥氏(Hermes Fund Managers)

2012/06/13  

LINEで送る
Pocket

イギリスのロンドン、僕は1ヶ月ほど滞在していました。
理由はいくつかあったのですが、自分自身の英語力の向上と、
ロンドンでは多くの日本人が働いているという話を聞いていたからです。

鈴木さんもロンドンにて奮闘されているひとりの日本人女性です。
開発学を学ぶ為にイギリスに渡り、現在は社会的責任投資に関わる仕事に携わってらっしゃいます。
※社会的責任投資とは、企業の社会的責任(CSR)などに配慮して行う投資のことです。

Wikipedia:社会的責任投資(Social Responsible Investment)

自己紹介と、これまでの歩みについて教えてください。


日本の大学では経済学専攻で、特にマクロ・金融を中心に勉強しましたが、
在学中に途上国開発に興味を持つようになり、卒業後は英国の大学院にて開発学を専攻しました。

当時は開発関連の仕事に就きたいと思っていましたが、
競争の激しい分野で、また実地経験のない私が雇ってもらうことは非常に困難でした。

在学中から行っていた人権関連のNGOでのボランティアの仕事で経験を積んだこともあり、
英国の非営利団体にてCSRの調査員として就職しました。
そこで3年半ほど働いた経験を生かして現在の職場に転職しました。

現在の仕事内容・活動内容を可能な範囲でご紹介ください。

まず会社名はHermes Fund Managersと言って、
British Telecom (日本で言うNTT)の従業員年金を管理・運用している会社です。

その中で私のチームの役割は、顧客が投資している企業とエンゲージすることです。
昨年から日本でも不正会計や経営上層部による不祥事など、企業統治に関するスキャンダルが相次いでいます。

このような問題を起こした企業と対話を持ち、
今後の改善策について説明を求めるのはもちろんのこと、
このような事件が起こらないよう、日ごろから健全な企業統治体制を整えるよう求めています。

また、環境汚染や労働者搾取、人権侵害などの問題を起こした企業とも対話を持ち、改善策を探っています。
少し前にはインドネシアのパーム油を生産しているプランテーションの視察にも行って来ました。

このような問題に関して、個別企業と話をする一方で、
政策レベルでの影響も図り、例えば関連する政府機関や証券取引所などとも話し合いを持っています。

ちなみに今の職場の前にいたのはEIRISという企業でした。(非営利ですが、一応有限会社の形を取っています)

海外で働くという志向を元々お持ちでしたか?

学生の頃から、海外、そうでなくても国際的な職場で働きたいと望んでいました。

なぜ、イギリスへ渡られたのですか?

開発学はイギリスの発祥で、実際多くの大学院で開発学のコースを提供していたためです。
また費用がアメリカよりも安く済むというのも大きな理由でした。
(アメリカの大学は学費が非常に高い上に、修士課程は2年かかりますが、イギリスは1年で取れます。)

あとは大学時代に所属していた国際交流団体でヨーロッパの学生と触れ合うことが多く、
ヨーロッパに関心があったこともあります。

イギリスに来てから遭遇した困難は何でしたか?

グループの中で発言・自己アピールすることです。
私は大学のチュートリアル(小グループのゼミのようなもの)で議論についていくのに苦労しました。

様々な訛りのある英語が、しかも会話調で飛び交うのでとても理解しづらかったです。
しかも、発言する機会を与えてもらえるわけではないので、
他人を遮って会話に参加しないと、何も言わずに授業が終わってしまうことも多々ありました。

これは個人的な性格なども関係すると思いますが、
大勢の前で積極的に発言するというのは今の職場でも難しいと感じることが多々あります。

あとは、顧客サービスが著しく悪い(日本が良すぎるという話もありますが)ことです。
普段の生活で相手にしなければいけないお店や公共サービスが、
とにかく無責任で平気で間違いを起こします。
問題があれば解決するまで強気で粘り強く主張する必要があります。

海外(イギリス)で働くこと、生活することの魅力について教えて下さい。

海外とひとくくりにすることはできませんが、日本と一番違うかなと思うのは、
上下関係など形式張ったものをあまり気にしなくて良いということだと思います。

イギリスは意外(?)と礼儀を気にする国なので、
もちろん失礼な態度は禁物ですし、上下関係が全く無いとは言えませんが、
上司に対しても提案や異論を持ち掛けることが普通に行われていると思います。

あとは休暇を大事にすることです。
有給を全部使うのはもちろん、よっぽどのことが無ければ土日はしっかり休み、平日の夜もさっさと帰ります。

それから私が個人的に非常に魅力的と思っていることは、
イギリス、特にロンドンの人々の間で、異なる文化・価値観に対する理解度が高いということです。

もちろん個人によって差はありますが、例えば人種差別的な発言や行動には非常に敏感ですし、
セクシュアル・マイノリティに関しても同じことが言えます。

今後の予定や将来の夢(目標)について教えてください。

特に具体的なものはありませんが、
そのうちもう少し公的な機関で政策面に携わる仕事をしたいなと漠然と思っています。

最後に、日本の若者にメッセージをお願いします。

若くて身軽なうちは少しの無理はできるので、思い切って色んなことに挑戦してみて下さい。

そのひとつが海外に出ることかもしれません。
私はロンドンにしか住んだことがありませんが、それでも、様々な価値観、考え方に出会い、
たくさんのことを学びましたし、それと同時に客観的な目で日本や日本人を見つめ直すことができました。
日本に対して非常に好意的な人もいれば、そうではない人、あるいは何も知らない人もいます。

そのような様々な見方を知ることで、
改めて日本の良さに気づいたり、逆に反省することは大事なことだと思います。
海外での就職などは簡単にいかないことも多いですが、頑張れば何とかなることも多いです。

以上、鈴木さんからの回答になります。

あとがき

企業の社会的責任投資(Social Responsible Investment=SRI)という言葉を
僕は鈴木さんから聞くまで知りませんでした。
日本でも企業の社会的責任(CSR)という言葉は定着し始めてきた気がしますが、
それを考慮した上での投資活動をSRIと呼ぶそうです。

社会的にネガティブな活動をしているとおもわれる企業には投資をせず、
逆に企業の社会的意義やCSRを評価して投資をするということもあるそうです。

イギリスでは早い段階でSRIが広がったそうで、イギリスはSRI先進国なのでしょう。
その最前線で働く鈴木さんを同じ日本人として誇らしく思います。

鈴木さん、御協力有難うございました!

太田英基

LINEで送る
Pocket

  • 日本最大級の留学情報サイトSchool With(スクールウィズ)
  • CareerWith

, , , , , , , , , , , ,


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です