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サムライレポート

人事コンサルを退職し渡英。日本酒ソムリエへと転身!日本酒を世界に広める使命を背負った若きナデシコ。菊谷なつき氏(サケソムリエ)

2012/09/13  

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サケソムリエという職業、あなたはご存知ですか?
ワインにもソムリエがいるように、日本酒(サケ)にもソムリエがいるのです。


日本酒。海外ではSAKE(サケ)と呼ばれることが多いです。
日本に旅行で来たことがある外国人は必ずと言っていいほど呑んでいるアルコールかと思います。

世界的な寿司ブームが起爆剤となり、日本食ブームが広がっています。
スペインではうどんチェーン店が流行っていたり、イギリスでも寿司屋が多くあります。
日本食と共に日本酒も広まりつつある流れに来ているのではないかと思いますが、
まさにその最前線に立ってロンドンで日本酒を広める菊谷さんにお逢いしました。

菊谷さんは以前、リンクアンドモチベーションという組織・人事コンサルティングの企業で仕事をされていました。
そこからのサケソムリエへの華麗なる転身。その経緯も含めて菊谷さんに伺いました。

自己紹介と、これまでの歩みについて教えてください。


はじめまして。菊谷(きくや)なつきと申します。
スペイン語で「ペッパー」という意味のピミエンタは、大学の頃つけたニックネームです。

16歳にタイのパヤオという村での植林ボランティアキャンプに参加してから、様々な形で境界線あるきを続けています。アメリカの大学でドキュメンタリー映画を撮ったり、スコットランドの自給自足コミューンで生活したり、ボストンとニューヨーク間を一ヶ月かけ徒歩で渡ったり、メキシコでマヤ文明を辿ったりして、計20ヶ国を渡ってきました。

大学卒業後、東京のリンクアンドモチベーションという人事コンサルティング会社にて2年半勤務をした後、
4年前に、持ち前の食いしん坊&酒呑み精神と、
1656年から続く母方の実家の日本酒の造り酒屋の血に目覚め、
日本酒の世界に飛び込みました。

東京のはせがわ酒店さんで短期修行をした後、
英国ロンドンのモダン・ジャパニーズレストラン「ZUMA」にて日本酒の唎酒師、サケソムリエとして働き始め、
昨年の6月より姉妹店「ROKA」にてヘッドサケソムリエを務めています。

個人では日本酒ソムリエとしてnatsukipim.comというブログを通して日英二言語で日本酒文化の紹介をしたり、
ロンドンをベースにした様々な日本酒イベントのオーガナイズやコラムの寄稿、
他分野の方との日本酒コラボの企画などをしたりしています。

そのような活動を全国の若手蔵元で組織する日本酒造青年協議会主催の組織「酒サムライ」と、
ロンドンのワールドワインコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」に認めて頂き、
2011年の「サケ・コミュニケーター・アワード」に選んで頂く機会に恵まれました。

現在の仕事内容・活動内容について教えてください。日本酒ソムリエという職業について、ご説明頂けますか?

日本酒ソムリエの業務内容としては、
レストランでの日本酒メニューの作成、日本酒の買い付け、従業員への日本酒に関する教育研修の実施、
そして日本酒に関わるお客様との直接のコミュニケーションが中心となります。

ただ、大きな絵で捉えると、海外における日本酒ソムリエというのはそれ以上の役割のある仕事で、
特に日本酒の国内需要や蔵元数の減少に伴って注目される海外輸出の大切な橋渡し役であると捉えています。

アメリカ各都市での日本食・寿司ブームをきっかけに、世界で日本食熱が拡がっています。
英国でもここ10年ほどで日本食レストランの数が急増し、
現在ロンドンだけで500近くの日本食飲食店があると言われています。

その流れをうけ日本酒「SAKE」も「SUSHI」に続く言葉世界共通語になってきているのですが、
英国ではまだまだ日本酒を一度も飲んだことのない人が大半。
中国の白酒と勘違いして「アルコールが強い」と怖がる方や、
「熱燗で飲むもの」と固定概念を持つ方によく出会います。

日本語のラベルや銘柄名、曖昧な分類表示から
「美味しいお酒に出会っても、二度と注文することが出来ない」と嘆く声も耳にします。

ファッションやトレンドだけでは無く、文化として日本酒を深く解釈し、
普段から嗜むようになるまで、簡単な道のりではない日本酒道。

レストランでのサービスやティスティングイベント、セミナーを通して、
日本酒を様々な料理と合わせたり、お酒を造る各地域や蔵元を知ってもらったり、
造りや蔵によって異なる味わいの違いを自分なりに感じ取ってもらう機会を創作するのが、
海外における「サケソムリエ」の役割だと自負しています。

私自身、日本酒を勉強し初めてすぐ出会ったある蔵のお酒を頂いた時に、
鳥肌が立つ程感激して「日本酒ってこんなに美味しいんだ!」と感激した経験がありました。

あの時の出会いがなければ、
ここまで自信と情熱をもって日本酒を薦め続けることが出来なかったのではないでしょうか。

数ある日本酒の中から「思い出の一本」に出会ってもらうことが、
日本酒ソムリエとしてのやりがいであり、海外における日本酒振興の一番の近道と信じています。

欧州の他国ではなく、イギリスで活動を続けられている理由はありますか?

イギリス、ロンドンは欧州の中での文化や経済の発信基地であり、
様々な国籍や民族文化の混じり合った国際都市です。

ワインの世界一つをとっても、フランスではフランスワインに、イタリアではイタリアワインに、
オーストラリアではオーストラリアやニュージーランドワインと自国のワインに偏ってしまう各国のソムリエ達の嗜好ですが、ロンドンに来る事で客観的、中立且つ公平にならざるを得ない。
それだけお客様の嗜好や要望も多種多様で、常に固定概念に捕らわれず新 しいものを求めているように感じます。

そのような場所で、
非ジャパニーズレストランでもデクスタシオン(小皿コース料理)に合わせたマッチングワインの一つに日本酒を取り入れたり、カクテルのベースとして日本酒を盛り込んだり、ワインソムリエが日本酒の知識を学び始めているという動きができています。

「ロンドンの食べ物は美味しくない」と言われていたのは一昔前のことで、
いまは伝統を残しながらも、様々な国のバックグラウンドを持つ若いレストラン経営者やシェフ、
ソムリエ達がこの街に新しい風を吹かせ、欧州の飲食業会を牽引してくれています。
この都市を基地に日本酒の素地を高めることが、欧州全体の日本酒振興につながると思って止みません。

海外で働くという志向を元々お持ちでしたか?キッカケはありましたか?

幼い頃から外交的で、日本の外の世界で何が起きているのか知りたいと好奇心いっぱいの子供でした。

アカデミックな勉強は余り得意な方ではありませんでしたが、
色んな国の人とコミュニケーションを取りたいという理由だけで英語の成績だけは常にトップ。

高校時代は国際ボランティア活動に打ち込み、
「緒方貞子さんの様に国連で働きたい」という夢を掲げてアメリカの大学に進学しました。

まさか海外で日本酒を伝える立場になるなんて想像はしていませんでしたけれど (笑)。

大きなきっかけと言えば、
大学で2年間アメリカとメキシコの国境問題に関するドキュメンタリー映画制作を行った際、
何世代にも渡る移民の歴史から成るアメリカ合衆国という国を通して、
自身の「アイデンティティー」、存在意義に強く向き合う機会がありました。

それまで「外へ、外へ」と様々な国の境界を歩いていたのが、
「自分のルーツ、先祖の守ってきた暖簾」のようなものに急に親近感や興味を得て、
秋田にある母方の酒蔵、富山にある父方の寺の歴史を貪る様に学んだのを覚えています。

4年前に秋田の祖父が体調を崩したのがきっかけで、
「自分にしか出来ない形で、先祖に恩返ししよう」と思い立ち、日本酒ソムリエとして転身しました。
就活で自己PR項目に「境界を越える人です」と意味も無く自信満々に語っていた夢が、
この様な形で実現しました。

日本酒ソムリエとして働く中で、立ちはだかった困難はありましたか?

まず私自身、この仕事を始めるまでレストラン勤務の経験がほぼ皆無だったので、そこからのスタートでした(笑)。
サービスとは、レストラン経営とは、おもてなしとは、
海外で日本食や日本酒を伝えること等、体を使って学んで来た3年間でした。

全く日本語や日本酒のわからない従業員やお客様に、英語で精米歩合や麹について何度も説明する日々。
レストラン特有の長時間のハードワークの中で自分の役割を見失い、正直心が折れそうになることも何度かありました。

しかし、ヘッドソムリエになり、2店舗をマネジメントし始めた頃からか、
「自分の情熱をいかにチームに電線させるか」ということが明確なテーマになり、
自分ひとりで頑張るのではなく、
ウェイターやワインソムリエに日本酒をプロモートして売ってもらう仕組み作りを進め、
一年で両店の日本酒の売り上げを二倍に増やす事ができました。

海外で日本酒を伝えるという仕事は前例も少なく、一般的ではありません。
何か決まった役割や成功例が用意されていて、それを巧くこなすだけでは成り立たない仕事。
常に新しい方法で日本酒を紹介し続け、
自分なりのスタイルで日本酒のファンを創作することが求められています。

人材業からの大転身だと思いますが、人材業で学んだことは現在に活かされていますか?

私が新卒で入社したリンクアンドモチベーションという会社は日本で初めて「モチベーション」、
人のやる気に焦点を置いた組織人事領域のコンサルティング会社で、私が入社した頃は創業6年目、
従業員の平均年齢25歳と若い組織でした。

新卒採用コンサルティングの新規顧客開拓の営業部門に配属され、
体育系なチームと共に朝から晩までアポ廻り、提案書作成、戦略ミーティングと休み無く働きました。

お客様との信頼関係を築くこと、チームで成果を上げること、人を育てること等、
この会社の根幹技術である「モチベーションカンパニー経営」の神髄のようなものを
みっちりと体に刻み込んだ二年半となりました。

短い期間しか過ごす事はできませんでしたが、この会社で教わっ たことは今の私をつくる大切な糧です。

今後の予定や将来の夢(目標)について教えてください。

3年に渡り、当店舗にて日本酒販売の成功モデルを創ってこられたように感じます。

英国生活も4年目に入る中、今後は更にロンドンを拠点とする欧州での日本酒振興の旗ふりをすべく、
2013年頭に自身の日本酒PRとコンサルティングの会社設立のため準備をすすめています。

交流の深い日本各地の蔵元さんのアンバサダーとして、
蔵元さんと二人三脚で欧州における日本酒市場の拡大を推進する事業を創っていくことを目指しています。

今年の5月、国家戦略担当古川大臣が『日本酒を「國酒」として海外展開する』という意思表明があり、
官・民が連携して、日本酒・焼酎の魅力の認知度の向上と輸出促進とに取り組む推進委員会
「ENJOY JAPANESE KOKUSHU」プロジェクトが立ち上がりました。

また、「日本酒から観光立国」というテーマを掲げて
先述した「サケサムライ」のコーディネーター平出淑恵さんが海外での日本酒振興活動を応援しています。

このような大きな動きの後押しが少しでもできるよう、
この地で日本酒アンバサダーとして日本酒の素晴らしさを伝え続けたいと思っています。

最後に、日本の若者にメッセージをお願いします。

(※写真はInternational Wine Challenge日本酒部門の審査の様子)

私は先祖の縁で日本酒という星に出会いましたが、今になるとそれは何でも良かったのだと思います。
天職やライフワークというのは最初から用意されているものではなくて、
「これが自分にしかできない仕事だ」とある意味錯覚するというか、
勝手に思い込むところから始まるのかなぁと。

私の場合は祖父が体調を崩して、
「今彼がいなくなったら彼のライフワークの日本酒は誰が担うのだろう?私がどうにかしなければ」
と孫なりに危機感、責任感を持ったところからのスタートでした。
そんな祖父は回復して毎日元気に日本酒を飲んでいますが(笑)

そして、せっかく挑戦するのであれば思い切りやること。
それも自分に無理をする形ではなく一番やりやすい思い切り方で。

私で言えば、日本酒の知識も唎酒経験もゼロから始めたので、
自分自身の記憶にもなるように日本酒との出会いや素晴らしさをブログという形で綴ることにしました。

継続できるように、自分らしい言葉で、バイリンガルで、趣味の写真や個人的な投稿も交ぜて。
誰も見ていない様な個人のブログが、今では一日200人もの人がアクセスしてくれるプラットフォームになり、
そのお陰で国内外様々な出会いや機会をもらいました。

それぞれの生まれた星の下、それぞれにしか出来ない仕事を、情熱をもって思いっきりやってくださいね。

以上、菊谷さんありがとうございました!

あとがき

サケソムリエという仕事はまだまだ海外では少ないものだと伺いました。
ですが、間違いなく日本酒は日本食ブームと共に世界に広がっていける文化だと思います。

蔵元…というと、どうしてもご高齢の方の姿が浮かんできてしまいます。
そういう世界だからこそ、若者の感覚や知恵、イノベーションが必要なのだと思います。

(僕の実家も祖父の代から苗木生産業を営んでいるのですが、菊谷さんの話で少し考えさせられました。)

まだまだ海外では一部の人にしか認知・親しまれていない日本酒ですが、菊谷さんたちの努力が紡ぎ、
10年後には世界中の人たちから親しまれるものになっていると素敵だと思います。

とりあえず日本に外国人観光客がきたらビールもいいですが、日本酒を楽しんでもらうことなのでしょう。
それにしても国家として日本酒の推進に動いているとは存じ上げていなかったので興味深いですね。
韓国政府がK-POPや韓流ドラマを戦略的に海外輸出しているように、日本政府も上手く取り組んでいって欲しいものです。

菊谷さん、ご協力ありがとうございました!

太田英基

※尚、現在菊谷さんがヘッドサケソムリエを勤めるロンドンのお店、ROKAのURLはコチラ

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