僕がキューバに滞在したのはほんの11日間。
たったの11日間。
たったそれだけで、キューバという日本とは大きく全く異なる国のことを
どれだけ掴めたかは正直自分ではわからない。
そもそもそんな短期間で、わかったふりしてその国のことを語ってはいけないのでしょう。
それでも、何も伝えないよりは伝えたほうが良いと僕は判断する。
今の僕の役割は”答え”を出すことではなく、”疑問・キッカケ”を投げかけること、それなのだと思っています。
あ、キューバが何処にあるか知っていますか?
カリブ海に浮かぶその国。アメリカの右下側。メキシコの右側。
自慢じゃ無いですが、旅を通して僕は世界地理に段々と詳しくなってきています。笑
初めての社会主義国家であるキューバ。
単純に社会システムが違うから面白そうだろという興味本位で臨んだのだけれど、本当に多くのところに違いを感じることが出来、学びとなった。
正直に言って、僕はキューバの社会システムがそこまで悪いとも思えない。
(そう言い切れるほど、全体理解はしていないと思いますが、
旅人として表面で見れる部分ではそう感じました。)
色々と欠けているものがあるけれど、それらを克服することができれば、
もしかすると世界で最も豊かな国の1つになれるのでは?と思ったりさえもする。
まず驚いたのは、給与が皆ほぼ均一であること。
医者も弁護士も清掃のオジサンも、給与がそれぞれ月給20~30ドルという事実。
どんなに頑張って仕事をしても給与は変わらない。
これではよほどの志が無い限り、怠惰になるのが人間の性でしょう。
ソ連が崩壊してから、同じ社会主義国家としてソ連からサポートを受けていたキューバは一気に厳しい状況となる。キューバの主要産業はサトウキビと葉巻だったのだけど、そこに”観光業”を付け加えることになる。
今では観光客の受け入れを始めてからかなりの年月が経ったそうだ。(確か20年?)
しかし、それで街の治安は悪くなったそうです。
キューバ人同士での犯罪ではなく、観光客目当ての犯罪が起きる。
殺人等は聞いたことがないけれど、強盗や詐欺などはあるようだ。
1ヶ月まともに働いて30ドルの給与。
それが観光客のカバンをひったくれば、
一瞬にして年収分程の現金が手に入ってしまうのだから…。
そりゃ犯罪は増えてしまいますよね。。
観光客で賑わう首都ハバナの旧市街には多くの警察官が配置されている。
しかし、聞いたところではその目的は”観光客の保護”ではないらしい。
いや、結果としては同じなのだけど、目的は”キューバ国民が特別収入を得ることを防ぐ”ことだと聞いた。
例えば、18歳の青年が観光客を騙して50ドルを手に入れたとする。
そうすると一ヶ月間、必死に働いた父親よりも良い稼ぎを手にしてしまうのだ。
こうなると家族のバランスも崩壊していく恐れがある。
それを危惧して、政府は警察官を大量に配備していると聞いた。
(勿論、観光客保護という目的もあるかと思いますが。)
そして実際にキューバでは観光客と一緒に話しているだけで、
キューバ人自身が職質を受けたりする。
街を歩いていて仲良くなったキューバ人も
「観光客とあまり近くで歩けないんだ。」と言って、少し離れて歩いたりもした。
お金を持っている観光客と触れ合うことが色々とキューバ政府としてはリスクが生まれてしまうのでしょう。
1つは上記にも挙げたような軽犯罪の増加と、それによる家族バランスの崩壊。
もう1つは単純に”羨ましい!”という欲求の発達を招いてしまうことではないでしょうか。
僕はキューバの国立大学へ訪問した際に、何人かのキューバ人大学生と話をした。
その中の一人が周囲の人には聞こえないような小さな声で僕に言った。
「私はキューバが大好き。何故ならここには私の家族も親戚も友達も皆いるのだから!母国が好きなことは当たり前でしょう?
…でも、やっぱり私は亡命することを考えてしまうの。
私も貴方みたいに世界を旅したい。
オシャレな服を着たい。良い生活をしたいの。
だから、今はアメリカに既に亡命している彼氏と計画をしているの。
私だけじゃなくて、多くの大学生が同じことを思っているわ。」
正直、驚いた。
キューバは教育や医療等には本当に注力しており、
全て無料で国民は享受を受けることが出来る。
優秀な人材こそが、資源の乏しいキューバの未来を切り開いていくのに最も重要な要素・・・のはずが、国立大学の学生から亡命を検討していることを聞いたのだ。
それではこの国の未来はどうなってしまうのだろう・・・?
遺伝子工学などの分野でキューバはとても進んでいると聞いたが、
優秀な研究者も他国に亡命することがよくあるらしい。
海外では年収1000万超えを約束してくれるのに、国内では年収3万円。
これでは亡命しない方が難しいのかもしれない。
スポーツ選手もよく亡命するようだ。
実際に、アメリカ政府はキューバ亡命者の受け入れに寛大なようだ。
(※これは単純にアメリカが親切だとは言い切れない色々な思惑があるようだ。)
特にアメリカのマイアミには亡命したキューバ人のコミュニティがあるらしく、
亡命した人達は皆そこを目指すとのこと。
実際に途上国によくある家族の誰かが先進国へ出稼ぎへ行って、
仕送りをするという構図がキューバにもあり、そうして一部の家族は良い暮らしを送れるのも事実とのこと。
国が貧しく、皆が貧しいから起こってしまう流れなのでしょうか?
優秀な人材ほど、外に出てしまうのは一見とても痛いことなのかもしれない。
しかし、生まれ育った母国にいずれ戻るという気持ちはあるようでした。
それならば、逆に留学じゃないけれども送り出すことを快く…と、
そんな簡単なことではないのでしょうか?僕は未だ勉強不足です。
実際にキューバは旅行者目線ではありますが、貧乏に感じました。
田舎の街にある陸上トラックの横にある学校のような施設の窓ガラスは半分ぐらい割れていました。
その街で唯一の10階建ての高さを誇るホテルも大変古くなっていて、
窓も閉まらなかったり、エレベーターも壊れていたりと…。
街中にあったバスケット場は3面のコートがあるのに、全部のバスケットリングが壊れていて、これではバスケットは出来ないですね…。。国民がスポーツする場所ぐらい補修したらいいのに…と、つくづく思うようなほどに貧しい国なのです。
物資もあまり無く、スーパーや小売店にいっても、
限られた商品がちょこっと並んでいるようなお店がほとんど。
ストリートフードを提供しているお店のメニューも1品だけだったりと日本では考えられない。
(一押しの一品ではなく、本当にそれしか無いという…。)
とにかく、綺麗好きで細かいことにこだわる日本人が移住したら、
日々不満がドンドン出てくる、正直そんな生活環境でした。
けれども、街を歩いていたら、とあるキューバ人が言っていました。
“キューバは生きるのは簡単なんだぜ。”と。
この国は皆、等しく貧しい。
その代わりに、本当の極貧乏人はいない。
道端で寝ているホームレスを見た記憶が僕には無い。
皆が等しく富を分けあっているから、最低限の生活が出来る。
そんな国なのです。
現地人が使う貨幣はクバーノペソと呼び、1ドル=24クバーノペソです。
1クバーノペソ=4円です。
そして、4円で、コーヒー飲めたり、アイス食べれたりします。
弁当も40円で食べれます。ピザも20円で食べれます。
聞いた話では、本当に貧しい人のために、
4円で食べれる公共食堂もあるとのことです。
だから、贅沢をしなければ食べていける。医療もある。教育も受けれる。
そういった意味で、彼はこう言ったのでしょう。
「キューバは生きるのは簡単だぜ。」と。
医療や教育も無料な為、貯金をする必要が無いとのこと。
家も家族でずっと世襲のように住んでいればお金はかかりません。
だから変な心配を抱えて貯金をする必要も無いとのこと。
そして、働いても働いても給与は同じ。
こういった状況下では、
“幸せ”を感じる選択肢で”お金”以外の大切なモノが浮かんでくる気がしますが、いかがでしょう?
日本人は老後の不安、子供の養育費・教育費、住宅ローン・・・そういった不安の為に、貯金をします。
彼らはそういった不安が無いので、貯金する必要がないとのことです。
資本主義の国は、やはり富の格差が生まれて、貧しい人はホームレスとなり物乞いとなったり・・・キューバではそれが無かったので、何事も良かれ悪かれだなと。
日本に帰国したら、社会システムについて書籍を読みあさりたいですね。
知識欲がガンガン出てきます。早く電子書籍化に対応して欲しい…。
キューバ、多くのことを考えるキッカケとなりました。
チェ・ゲバラを追いかけるだけでも、キューバ革命について、彼の考えについて、学ぶことが多かったです。
もし、キューバが資源大国で大金持ちであれば、もっと自由化が進み、彼らの求める理想郷に辿りつけるのかもしれない・・・
けれど、ソ連がそうではなかったように、実際にはとても難しいことなのでしょう。
しかし、キューバにはこれからも頑張って欲しいと素直に思えました。
社会主義国家、中国やら北朝鮮やら、僕らは良いイメージを持っていないけれど、
キューバはちょっと違う気がしました。
僕はまだまだ勉強不足なので、是非皆さんも自分の目で肌で、キューバを感じて下さい。
話を拡げすぎてまとまらなくなりましたが、思ったことを此処に備忘録代わりに書き留めておきます。
旅が終わった後に自分自身が、どういう考えを持つのか楽しみです。
以上、キューバ、ありがとう。
hasta la victoria siemple!!